2008年6月19日

光の指で触れよ

池澤夏樹は、いつも私に新しい世界を見せてくれる。

物語という世界を超えて、現実世界にある様々な活動や問題や思想なんかまで、私に教えてくれる。

自分の無知を恥じつつ、ここで知ることのできた喜びを味わう。

ここで得た知識や感情、考え方をどう進めていくかは、いつも自分次第なのだ。

池澤夏樹からのメッセージは、いつも痛いほどよく分かる。自分なりに。

光の指で触れよ

「光の指で触れよ」は、前作「すばらしい新世界」の続編だ。

けれど、続編と思って読むと、たぶん、混乱する。同じ登場人物を通して語られる、違うテーマの物語なのだ。

WEBでの評判を見てみると、かなり賛否両論、評価の分かれるこの作品。私には、すばらしい作品だった。「すばらしい新世界」もすごく好きだけど、「光の指で触れよ」が内包するテーマは、たぶん、今の私の生きていく上で考えているテーマに、すごく近かったのだ。

夫婦の形、パートナーに求めるもの。それを継続させていくときに発生する可能性のある問題。お金に縛られず生きる生き方。お金に振り回されない生き方とは何か?
生きる喜びとは?愛とは?家族とは?
答えは自分の中にある。そして主人公が出した答えは、私にとっては、幸福な答えだった。

お金では得られない幸福感を、私は知っている。 それは決して楽ではなく、しかし肉感的で、直接的で、具体的で分かりやすく、楽しい。 そういう、言葉では説明しきれないような幸福や豊かさを、この小説は描こうとしている。とても難しい試みだ。 それでも、私には「とてもよく分かった」。 額に汗して、必要な分だけの働きをして、相応の報酬を得る。時には相応の報酬さえ得られないが、とにかく「楽して儲かったりはしない」。 人を育てることについても。何が自然で、何が不自然なのか。幸せな人間を育てることの難しさ。何を学び、何を感じてもらい、どう生きていくのが幸せなのか…自分も迷いつつ進む道を、子に教えていくことは本当に難しい。 それでも、ひとつの生き方、それも、私には至極納得できる生き方が、この物語に描かれている。